音楽が映画の感情表現にどのように影響するか
映画で使われる音楽はBGMと呼ばれており、あくまでもコンテンツの脇役的な要素として捉えられることが多いです。たしかに存在しなくても成立しますが、その有無によって作品のクオリティは大きく変わってきます。なぜなら、BGMは強く感情に訴えかけることも多く、映画のストーリー性に対する感想にまで影響することが多いからです。たとえば、荒々しい音が聞こえていれば、主人公の心が穏やかでないことをイメージできます。ロマンチックな音楽が流れていれば、恋人同士の心地よいムードを視聴者に届けられるでしょう。心理学の研究者のなかにも、映画における音楽は非常に重要という見解を示している人は少なくありません。また、近年はBGMという言葉が似合わないほど、クオリティの高い楽曲も使われるようになっています。もはや前述のような脇役的な要素ではなく、1つのコンテンツとして成立しているのです。
その裏付けとして、サウンドトラックの売れ行きが増えてきました。映画を見て感動した人が購入するのですが、これは映画の素晴らしさと音を関連付けているからに他なりません。楽曲を聴くことで、どのようなシーンだったのかすぐに思い出せる人もいるでしょう。それだけ鮮烈に記憶に残っているのは、感情が大きく揺り動かされたからです。悲しいストーリーは、BGMによって壮大な悲劇として脳にインプットされることもあるでしょう。その楽曲を少し耳にするだけで、ストーリーを思い出す前に涙が流れるかもしれません。主人公が運命に立ち向かうシーンで、圧倒的なオーケストラの演奏が流れれば、視聴者のテンションも一気に上がります。それからは、その楽曲を聴くだけで映画とは無関係に体が興奮してくることも多いです。
このように、人間の感情はBGMが及ぼす効果から逃れることはできません。深層心理のレベルで残り続けるほど強烈であるため、視聴者に対するメッセージ性を重視する映画では必須といえます。ただし、それだけ影響力があるので、選び方を間違えると大きくマイナスに作用してしまいます。楽しい場面で悲し気な楽曲を流してしまうと、不自然という感想だけでは済まないでしょう。楽しいはずの心の中で悲しみの感情が湧き起こり、それらがせめぎ合うことにより、気持ち悪さを感じてしまうケースもあります。すなわち、使い方次第でプラスにもマイナスにもなるというわけです。ストーリー性が付与する感情と同じ方向性の音楽を使用する必要があります。